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化粧文化 COSMETIC CULTURE
もっと知りたい日本髪

025

断髪

2023.04.13

「真っ直ぐの長い黒髪こそ美しい」という日本に長く根付いた美意識。そこにウェーブの美という新風を吹き込んだのが、前回取り上げた「耳隠し」でした。さらに快活な短い髪という新しい美を提案したのが「断髪」です。
断髪は欧米で第一次世界大戦に従軍した女性が、手入れに困って髪を短く切ったのが始まりともいわれ、首筋辺りで髪を切り揃えたり、後頭部を刈り上げたヘアスタイル。自由で開放的、新しいものを追い求める風潮とも重なり、世界的な流行となりました。
日本では文明開化の頃、髷を切って断髪した男性に倣(なら)って髪を切る女性が現れたため、女性の断髪禁止令が出されたという歴史がありました。それほど女性が髪を切ることに対する抵抗感は根強いものでした。

『近代美しき粧ひ』 メイ・ウシヤマ 昭和3年(1928)
断髪したアレンジで、毛先にカールをあしらった「バッヴ・カール」。モデルは松竹の小桜葉子『近代美しき粧ひ』 メイ・ウシヤマ 昭和3年(1928)
断髪したアレンジで、毛先にカールをあしらった「バッヴ・カール」。モデルは松竹の小桜葉子

この古い常識を断ち切るように髪を切り、新しい女性文化として断髪を始めたのが、モダン・ガールや女性文学者たち。大正末期、「突飛」「不自然」という批判を浴びつつ進歩的な女性が取り入れた断髪は、昭和初期には女学生へ、やがて一般の女性たちへと少しずつ広がっていきます。
社会慣習に則った従属的な髪型から、自己表現としての自発的な髪型へ。断髪はそんな価値観の転換期に登場した髪形だったのです。

『近代美しき粧ひ』 メイ・ウシヤマ 昭和3年(1928)
襟足の作り方『近代美しき粧ひ』 メイ・ウシヤマ 昭和3年(1928)
襟足の作り方

※このコンテンツは2015年から2018年にポーラ文化研究所Webサイトにて連載していた「やさしい日本髪の歴史」を一部改訂再掲載したものです。

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