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化粧文化 COSMETIC CULTURE
お化粧ヒストリー

さまざまな道具を使用するお歯黒化粧

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さまざまな道具を使用するお歯黒化粧

2023.10.26

歯を黒く染める「お歯黒」は日本最古の化粧とされ『魏志 倭人伝』や『古事記』にも記載されており、明治時代以降徐々に廃れていくまで続いた、長い歴史をもつ化粧です。もともと上流階級を中心に行われ、江戸時代になると庶民にも広がったため、お歯黒道具一式は身分にかかわらず女性の嫁入り道具として欠かせないものでした。
お歯黒化粧をするために用いたのが、この写真のさまざまな道具。一体どのように使ったのでしょうか。

お歯黒化粧に必要なものは「お歯黒水」と「五倍子粉(ふしのこ)」です。「お歯黒水」とは、米のとぎ汁や酢などに古釘など錆びた 鉄を入れた水溶液のこと。「五倍子粉」は「ヌルデ」という木にできた虫こぶを粉末にしたものです。お歯黒道具を使って、この2つを歯に染め付けていきます

1. 「お歯黒壺」から使う分だけのお歯黒水を、急須のような形をした「鉄漿(かね)つぎ」に入れて加熱します。
2. 加熱したお歯黒水を、鉄漿つぎからお椀のような「潼子(しょうず)」に注ぎます。
3. お歯黒筆を使い、お歯黒水と「五倍子箱(ふしばこ)」に入った五倍子粉を交互に歯に塗っていきます。そうすると、お歯黒水と五倍子粉は化学反応を起こし、黒く変化し、歯に定着します。
4. お歯黒水は渋いため、塗り終わったら「嗽茶碗(うがいちゃわん)」で口をすすぎ、「耳盥(みみだらい)」に出してお化粧の完成です。女性が屈まなくてもいいように、耳盥は円筒形の「台輪(だいわ)」で高さを出していました。

なかなか手間がかかるお歯黒化粧ですが、大切な身だしなみだったため女性たちは毎朝行っていました。既婚女性というライフステージをあらわすほかにも、お歯黒には歯や歯茎を守る成分が含まれていたことから、デンタルケアの役割も果たす化粧でした。

庶民用お歯黒道具一式 江戸時代庶民用お歯黒道具一式 江戸時代

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