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化粧文化 COSMETIC CULTURE
コスメのある風景
眉化粧が意味するもの

036

眉化粧が意味するもの

2023.08.10

しっとりとした漆に蒔絵で橘唐草を散らし
橘、五三桐、蝶、鶴の紋を描き加えています。
どの角度から見ても端正な仕上がりです。

婚礼化粧道具とは、
輿入れさせる娘のために誂えた婚礼調度品のひとつ。
江戸時代初期に体系化され、近代まで作られ続けました。

朱色の紐を解いて箱を開けると、
納められているのは「毛垂(けたれ)」です。
江戸時代、御所ことばでは「剃る」を忌み嫌って「垂る」と表現し
剃刀(かみそり)をこのように呼びました。

女性は眉や襟足を整え、
男性は額や髭を剃るなど、
「毛垂」は身だしなみを整えるための必需品でした。

このような婚礼化粧道具を誂えた上流階級の女性たちには
特徴的な眉化粧の習慣があったといいます。

一定の年齢になると眉を剃り、額に新しく眉を描くのです。
年齢や階級、または儀式などによって
両眉の間は指二本分あける、細く薄く形づくる、
生え際から五分(1.5センチ)下に描く、など
形や位置、描き方まで厳格に決められていました。

眉を剃り落とし、新たな眉を描いたとき
女性たちは自身に期待されている社会的役割を
身体で感じていたのかもしれません。

橘唐草紋散蒔絵婚礼化粧道具 毛垂・毛垂箱 江戸時代後期
Photo YURI MANABE

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