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2025.08.27
香水、アロマ、化粧品、そして日用品など、
さまざまなシーンで香りの使い分けを楽しむ私たち現代人。
でも実は、それに負けず劣らず香り好きだったのが古代ギリシア人です。
古代ギリシアに香料や香油が伝わり、
盛んに使われるようになったのは紀元前7世紀頃。
それまでは宗教儀式に使うものだった香りを、
彼らは健康という新たな目的のために研究し、活用し始めます。
医学の祖とも言われるヒポクラテスは、健康な生活習慣のひとつとして、
香料を入れた風呂に入ることや香油でのマッサージを推奨。
当時の喜劇のなかの記述なので多少大袈裟かもしれませんが、
身だしなみにこだわる人物が入浴する際に、
脚、腕、胸、髪、眉など、からだの部分に合わせて、
植物の香りのエキスや香油を使い分けるシーンが描かれたりもしています。
このように、様々なシーンで使う種々の香油を入れていたのが香油壺。
年代や地域によって形やデザインの違い、また素材もコアガラスや石製のものもありますが、写真は土器製のもの。
よく見ると頭部が蓋になっていて、胴部には小さな点で毛並みのような表現がみられます。
こうした容器とは思えないほど手の込んだ造型を見ていると、
古代ギリシア人たちの香油への愛着とこだわりが伝わってくるようです。
羊形彩文土器製香油壺 鹿形彩文土器製香油壺 針鼠形彩文土器製香油壺
ギリシア 紀元前6世紀
Photo YURI MANABE