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2025.12.24
装いの仕上げに欠かせないアクセサリーですが、
時代や国が違うと、その目的や意味が変わることもあります。
例えば、中央アジアのトルクメン(現トルクメニスタン)。
高い芸術性と独自性で注目されるこの国の装身具は、
銀、もしくは金メッキを施した銀に、紅玉髄がはめ込まれている豪華なデザインが特徴。
珊瑚やトルコ石を施したものもあります。
全身一式を身につけると6~8キロになることもあるほどです。
そんな重量にも耐えていたのは、
過酷な自然環境と侵略の歴史の中で暮らすトルクメンの人々にとって
装身具は宗教的な意味を持つお守りであり、
経済的な余裕がある時の投資=財産であり、
部族や地位を表す名刺代わりでもあったからです。

写真は、トルクメンのテケ族の耳飾り。
三角形の中央に紅玉髄を配し、上下は切り抜き文様というテケ族の基本形をベースにしつつ、
下部は切り抜き文様の複数パーツを輪で繋げた独創的なデザインです。
動きに合わせてサラサラとなびく鎖部分とあいまって、
大ぶりながら繊細かつ優美な印象を与えています。
同時に、血の色に通じる赤が怪我や難産から身を守ると考えられた紅玉髄、
また災い除けになるとされた青いトルコ石などを目にすると、
超自然の力を味方にし、邪悪なものを跳ね除けようとしていたトルクメンの人々の、
生きることへの祈りも伝わってくるようです。
耳飾り トルクメン(現トルクメニスタン)テケ族 18世紀後期あるいは19世紀前期
Photo YURI MANABE